医療法人 永寿会  福島病院
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病気の話

「捻挫(ねんざ)のおはなし」

 
「捻挫(ねんざ)のおはなし」
理事長 福島文雄
捻挫とは?  
 皆さんの中で、「歩いていて足をひねった」とか「段差を踏み外してくじいた」、という経験をされた方は少なくないと思います。また季節柄、「スキーやスノーボードをしていて膝を捻挫した」とか、「アイススケートで足を捻った」、春先なら、「野球で長打を打った際に一塁ベースを回る際に足を取られた」という患者さんにお目にかかる機会があります。
 いったい、「捻挫」とは医学的にどういう病態なのでしょうか?

  捻挫とは関節を過度にひねったり伸ばしたりすることで関節を構成する組織を損傷した状態を言います。関節は、一般的に2つ以上の骨が靱帯や軟骨などで連結されたものです。靱帯とは、関節の安定性を維持する組織で、関節の運動方向を誘導する役割があり、軟骨とは、関節の潤滑性を高め関節運動をスムーズにする働きや、高い圧力に耐えるクッションの役割を担います。

  捻挫を起こすと、これら関節を安定させる機構はその機能を損ない、関節運動(曲げる、伸ばす、捻るなどの運動)に支障をきたし、痛みのために足を接地することができなくなったり、日常生活やスポーツ活動に支障をきたします。

捻挫の病態
 捻挫の具体的な症状についてお話します。まずは、(1)腫れが生じます。捻挫を起こすと関節包や靱帯を損傷しその内面の層(滑膜層)に炎症が起こるため腫れが発生します。通常、腫れは次第に引いてきますが、初期治療が不十分だと腫れが長引き、関節の適合性が低下し軟骨の変形を生じることもあります。

 次に、(2)内出血です。程度によりますが、関節包や靱帯などが損傷(部分断裂)を起こすと、その部分から出血し、青黒く皮下出血斑が広がっていきます。ここで圧迫固定をしないと関節が動くたびに傷ついた部分の傷口が開き、靱帯の再生を妨げ、関節の修復に時間がかかります。また、損傷がひどく断裂範囲が広い場合は一部の靱帯が修復されないまま萎縮して消失(変性)してしまうこともあります。その他には(3)関節を動かすと痛む「運動痛」や(4)手で押すと痛む「圧痛」も代表的な症状です。

右足首の捻挫
受傷後の腫脹(左)とアイシング処置後(右)

応急処置の方法

では、「捻挫」をしてしまった時にはどうすれば良いのでしょうか?応急処置の例として、捻挫の中で最も多い「足関節捻挫」についてお話します。 足の「捻挫」をしたら・・・

1.まず寝るか座って捻挫した足を少し高くしてください。
2.氷で患部を冷やしましょう。(15分程度)
3.包帯や足首サポーターなどがあれば固定してください。(足背部は強く圧迫しないこと!)
4.できるだけ速やかに、専門医の診察を受けてください。

 医療機関に行くまでの間に応急処置として固定をしておくと捻挫の悪化を防ぐことができます。
  圧迫固定をしないと、足首が動く度に靱帯の傷口が開いて出血や腫れがひどくなってしまいます。出血や腫れがひどくなると、その吸収には時間がかかり、出血した血液や滲出したリンパなどに含まれる線維が吸収しきれずに残存することになります。できるだけ早く安静固定を確保することが、早期回復につながります。軽い「捻挫」と思っても、動いているうちにだんだん腫れてきて足が接地できなくなることもあります。

応急処置の基本

(1)局所の安静(Rest)(2)冷却(Icing)(3)圧迫(Compression)(4)患部の挙上(Elevation)
が基本になります。(頭文字をとって RICE ともいいます)。

治療と予後
 続いて、捻挫の治療と予後についてですが、一般的に治療は保存的(非手術的)に行われ、(症状によりますが)安静固定が保持できればおよそ2週間程度で修復されます。受傷後3〜4週目まではリハビリテーション以外の所では患部を動かすような無理な運動は控えた方が良いでしょう。修復された靱帯は、瘢痕(はんこん)という組織でしばらくの間補強され、数ヶ月後にはほとんど元の組織に回復します。この瘢痕が存在する時期は、最も捻挫を再発しやすい時期です。

 この時期には、本来靱帯が持つ柔軟性や関節支持力よりも劣るため、些細なことでも再発しやすい状態にあります。この時期に捻挫を繰り返し、瘢痕組織を傷つけるとなかなか元の丈夫な組織に戻ることができず慢性化してしまう場合もあります。(若い女性やスポーツ選手などに多いいわゆる「反復性捻挫」)
  
再発予防とリハビリテーション

 捻挫を繰り返さないためには、受傷後の早い時期からリハビリテーションを始めることが重要です。痛みが引いてきたからと言って無理をすると、同じ場所を再び捻挫しやすくなります。

 痛くないとは言っても、まだ損傷された組織が修復されたわけではないのです。前述のとおり、組織修復までは一定期間の安静が必要となり、安静と引き換えに患部のみならず全身の筋力や関節機能、運動能力は低下をきたします。痛みが引いたからといって、その低下した機能、運動能力でこれまでの日常生活あるいはスポーツ競技に復帰するとどうなるでしょうか?危険が多すぎますよね。

 当院リハビリテーション外来では、理学療法士が関節機能の回復具合を確認しながら、患部のみならず全身の失われた機能、運動能力の回復訓練を行い、症状に応じてテーピングやサポーターなどを処方し捻挫箇所の保護を行ったり、受傷直後の歩行や移動手段の指導、それに即した日常生活動作の練習を行っています。

 また、スポーツ選手にはチーム指導者と連絡を取りながら競技復帰見込み時期を協議した上で、各競技の運動特性に合わせたリハビリプログラムを検討し、医学的トレーニングの指導、パフォーマンスチェック、段階的自主トレメニューの考案なども行っています。

「捻挫」でお困りの方は当院整形外科、リハビリテーション科までご相談ください!


   

「五十肩のおはなし」

「五十肩のおはなし」
理事長 福島文雄
 いわゆる五十肩というのは、50歳代を中心に起きる肩の痛みや動きが悪くなる症状につけられた病名です。放っておいても自然に治るので心配いらないと言う人がありますが、そうとも限りません。
 
 適当な運動や治療をしないと関節が固まって拘縮という状態になることもあります。英語で“Frozen shoulder(凍結肩)”とも言います。

 肩の表面には大きい三角筋があり、その内部に腱板という幅広いスジがあって上腕骨と肩甲骨をつないでいます。正常なときには筋肉やスジが骨を引っ張り関節を動かしていますが、五十肩ではそれらが老化して傷つき、すべりが悪くなってしまうのです。原因としては、同じ姿勢を続ける仕事や、日常運動不足のところに急に激しいスポーツや仕事をした後に、突然痛みや運動制限が出現すると考えられます。

  来院される患者さんのほとんどが“すぐ治ると思っていたが“と言って来られます。進行すると関節の拘縮が強くなり、治療には半年〜1年もかかることがあります。治療は予防が一番です。毎日体操するなど両手両足を使って体を動かすことです。

 五十肩になってしまったら、まず安静、湿布や塗り薬を使って労わりましょう。夜間は体が冷えますのでタオルなどを巻いて保温します。

 少し痛みが治まれば、どんどん体を動かすようにして下さい。腕を振り子のように動かすのもいいでしょう。それでも良くならないときは、お医者さんに相談して下さい。薬や注射で症状を和らげることができます。

 近年、MRI検査の発達により、筋、腱、骨、関節腔などがより分かりやすくなり、損傷している所も見つけることができるようになりました。

 最近は関節カメラ(内視鏡)を使ってさび付いてしまったスジをきれいに元通りにする手術も行われるようになってきました。

専門医への紹介も行っておりますので、ご希望の患者さんは
当院整形外科までお問い合わせ下さい。


 

「画像診断」

 
「画像診断」
院長 南 卓男

最近医学の世界で画像診断ということがよく使われます。これは簡単にいえば人間の体内の状態を絵として表現し病気を診断する方法です。高血圧や糖尿病、精神病等の機能的な病気は画像診断の対象とはなりにくく、一方、癌や出血、炎症など塊(かたまり)を作る病気が画像診断のよい対象となります。以前は画像診断といえばほとんどがX線を使ってする検査のみでしたが最近では磁気、超音波、放射性同位元素などを使用して人間の体内の異常を絵として表現する方法が飛躍的に進歩しました。この放射線(X 線)を利用した画像を診断する医師は放射線科医と呼ばれていましたが現在では正確には画像診断医です。それは放射線を使用しない検査が増加しているからです。

画像診断の種類
画像診断の手段としてはX線、磁気、超音波、放射性同位元素〔ラジオアイソトープ〕などがあります。X線や磁気を利用して得られた情報をコンピューター解析しCT画像やMRI画像として人間の体内の様子が手にとるように画像として表現されるようになりました。

X線を利用した画像
最も古くからある単純X線撮影はX線が体内を透過する性質を利用して生体を画像化したものです。骨折を診断する骨のX線撮影や肺結核や肺癌の診断に利用される胸部?]線撮影があります。さらに造影剤〔バリウム〕を飲んで撮影する上部消化管造影や直腸から造影剤を注入する注腸造影は健診等に広く利用されています。
血管内に造影剤を注入する血管撮影も全身の血管について造影検査が行われます。特に心臓の冠状動脈の検査は狭心症や心筋梗塞の治療の一手段として重用されております。また癌に流入する血管を造影しその血管より抗がん剤を注入したりその血管そのものを詰めて血流を止め、癌を壊死または兵糧攻めにする塞栓療法は重要な治療手段であります。

X線にコンピューター解析を組合わせたX線
昭和48年に開発され現在最も広く利用される画像診断方法であります。頭の先から足の先まで人間の体を輪切りにして細かく監察することができます。脳出血、脳梗塞など脳の病気、肺、肝臓、腎臓などの診断に必須の検査です。特に脳の診断に関して飛躍的な進歩をもたらしました。

磁力を利用した画像(MRI画像)
MRI検査は強い磁石と電磁波を使った検査です。生体に強力な磁場を加えそこに電磁波を送って生体の水素原子の反応を画像にするものです。X線CTと違って放射線をあびる事がなく安全な検査です。したがって繰り返し何度でも検査ができます。ただし体にペースメーカーや骨折治療の金属が入っている場合は検査ができません。CTは体を輪切りにする方向でしか撮影ができませんがMRIは縦、横、斜めとあらゆる断面からの撮影が可能です。撮影に時間がかかり〔10−30分〕その間じっと動かないようにする必要があります。MRIを利用して血管のみを撮影する方法もあり血管造影をしなくてもその病変を知ることができます。

超音波検査(エコー検査)

  音波を当ててその跳ね返りを画像にしたものです。こだまや山彦を画像にしたものだと思えばいいと思います。音波探知機、魚群探知機と同じ原理です。医者の持っている聴診器は心音や呼吸音を聴くためのものですが超音波検査は音波を生体に当ててその跳ね返り(エコー)を見るもので現代の聴診器ともいえます。音波は空気よりも水の中でよく伝わります。そのため水分を多く含んだ臓器(心臓、肝臓、腎臓など)がよく見えます。しかも体に障害を与えることがないためじっと当てておれば臓器の動きが観察できます。心臓の動き(心エコー)や、血流(ドップラー血流検査)の観察にすぐれています。空気中は音波の伝わりが悪く、空気の多い臓器(肺、腸など)の診断にはむいていません。診察室には必須の道具です。 

核医学検査
放射性同位元素でラベルした物質を注射してその物質の集まりやすい病変部に集積させ特殊な装置(ガンマカメラなど)で検出し画像にする検査法です。シンチグラフイーと呼ばれています。その特殊な形の検査として、SPECT(スペクト)、PET(ペット)がります。

サーモグラフイー

  体表の温度差を色の違いにした画像がサーモグラフイーとよばれます。血流障害のある下肢は温度が低く、この微妙な温度差を色の差として画像化したものです。
  以上の様に最近の画像診断の進歩は、生体を色々な方法で色々な断面で微細に分析して病気の診断に役立てています。なお当院で使用されている画像診断は黒字で記してあります。画像診断を希望される方は主治医にご相談ください。


 

「古くて新しいめまい」

「古くて新しいめまい」
院長 南 卓男
 
 めまいをうったえて病院にくる患者さんは非常に多くいます。めまいが原因で転倒、骨折し、寝たきりとなり、長く寝付いたお年寄りをしばしば見ます。寝付く期間が長いので、時には脳卒中よりも恐ろしい病気となることもあります。それではめまいはどこの病気で、何科で見てもらえばいいでしょうか。目が回るから目の病気で眼科、脳卒中のときにも目が回ることがあるから神経内科、耳鳴りや難聴のときにもめまいが起こるから耳鼻科の病気でしょうか。
 
めまいとメニエール
 めまいはローマ時代や万葉の時代から知られた古い病気です。
19世紀頃までは脳や胃腸に原因がある病気と考えられていました。1861年フランスの耳鼻科医メニエールが強いめまいと難聴におそわれた後に死亡した少女を解剖し耳の奥にある三半規管に出血があることを発表しました。その後、他の研究者によって同じ結果が確かめられ、彼の業績をたたえてメニエール病と名づけられました。
以来“メニエール”という言葉がめまいの代名詞のようになって使われてきました。このために現在ではめまいの患者さんが耳鼻科で診察を受けることが一般的となっております。文明が発達し各種のストレスの増加やパソコンの普及につれて耳だけでは説明のつかないめまいが増えてきました。最近では耳鼻科医よりも首や脳を含めて神経全体を診察する神経内科医も加わって総合的にめまいの診療を行う病院が少しずつ増えてきております。
 
ぐるぐるとふらふら

 めまいという言葉にはさまざまな症状が含まれております。典型的な自分や周囲がぐるぐる回る感じから、ふらふらする感じ、自分や周囲がゆれている感じ、目の前が暗くなる、一瞬意識を失ってしまう、などの症状が全てめまいとして表現さています。英語ではそれぞれに違った単語があります。また全てをまとめて平衡機能障害ともいいますが漢字が難しくて一般的ではなく、やはり“めまい”がなじみやすい言葉として広く使用されています。ぐるぐる回るめまいを回転性めまいといい、それ以外の非回転性めまいと大きく分けることができます。以前はぐるぐるする回転性めまいは耳に原因があり、ふらふらする非回転性めまいは脳が原因であると言われていましたが、診断技術が進歩してめまいの種類だけでは障害部位を決めることができないことがわかってきました。
 
忍者屋敷

 それではめまいはどうしておきるのでしょうか。内耳にある三半規管からはいってくる体の位置や動きによる情報、目に写る周囲の状況に関する情報、手足の筋肉の緊張状態からはいってくる姿勢に関する情報などを脳全体で総合的に判断して体のバランスを保っています。このシステムのどこかに障害がおきると立っていられなくなり、ふらふらしたりぐるぐる回るように感じるのがめまいなのです。

 “忍者屋敷”といって床や壁を意識的に傾斜させて作った建物の中にしばらくいるとめまいや吐き気におそわれてきます。阪神淡路大震災の後、少し傾いた住宅に住んでいた人たちの多くがめまいをうったえていました。これも目から入る情報と手足の筋肉から入る情報のずれによりバランスを保つシステムに障害がおこったからなのです。
 
大切な脳の検査
 
 めまいの原因を調べるためにはどんなタイプのめまいであるか、何をしているときにどんな姿勢でおきたか等、詳しく患者さんから聞くことが必要です。左右の視力に差がないか、めがねの度数はあっているかなど目に関する診察も大切です。もちろん体のバランスの中心である内耳の三半規管の働きを中心として検査します。しかし何といってもめまいの発作におそわれた患者さん自身が最も恐れているのはめまいの不安から自分は死ぬのではないか、脳に何か重大なことがおこっているのではないかということです。このため最も必要で緊急性を要するのが脳の検査です。

 めまいの発作時、特に頭痛をともなう時にはまずX線のCTスキャンによって脳に致命的な脳出血やくも膜下出血がないことを確認する必要があります。症状が安定すればさらに磁石によるMRIによって脳の詳しい構造の変化や血管の状態を検査します。しかしながら今までめまいに関して脳はめまいの発作時以外はあまり重要視されていませんでした。MRIが普及するまでのCTスキャンは救急的に必要な検査ではありますが慢性期のめまいに関する異常を発見することが少なかったからなのです。

 脳は大脳、小脳、脳幹という三つの部分から成り立っています。めまいに関しては主として小脳や脳幹の障害が原因として論じられてきましたが、それらの病気は非常にまれにしかなく、小脳や脳幹に問題がなければめまいの原因は脳ではないとされていました。ところが近年MRIによるめまいの研究が進歩するにつれてめまいには小脳よりも大脳がより深く関係しているのではないかと考えられ始めております。
 
めまいは現代病

 めまいの患者さんの多くが首や肩の凝りや痛みをともなっております。首は脳と全身をつなぐ関所のようなところです、ここには自律神経や全身から脳へ行く多くの血管や神経が集中しています。首とめまいの関係はまだ明らかにはされていませんが、パソコン時代の現代病であるめまいの原因として首の重要性が指摘されています。

 全てのめまいの症状を含めた平衡機能の障害は耳や目だけでなく、全身からの情報が脳で複雑に統合される過程で発生した異常といえます。単に耳や目あるいは首や脳といった単独の部位の病気ではないと考えられます。この点ではめまいはひとつの診療科では対処しにくい病気であり総合的な見方からの治療が必要であります。めまいにはまだまだ多くの謎がひそんでいます。
 
(めまいに関する悩みや質問はお気軽にどうぞ。南 卓男)


 

「脳梗塞ってどんな病気?」

「脳梗塞ってどんな病気?」
副院長 小林保雄

 以前は原因が解らなく急に半身麻痺(半身不随)や意識不明になった状態を‘卒中’または‘中風(ちゅうぶう)’と呼ばれていました。しかし、それらが脳の血管障害によるものと解ってから‘脳卒中’と呼ばれるようになりました。そして、医療の進歩した現在でも脳卒中の発生頻度は依然として高く、死亡率は癌・心臓病についで第3位を占めています。脳卒中すなわち脳血管障害には血管が破れて生じる出血性病変(脳出血・クモ膜下出血)と血管が詰ってしまう虚血性病変(脳梗塞)に大別されます。今回は記憶にも新しい『長島元監督』で話題になった脳梗塞についてお話したいと思います。脳梗塞とは脳の血管が詰まりその先の脳組織に血流が行かなくなり、酸素や栄養分を送ることが出来なくなり、脳組織が死んでしまう壊死状態を指します。ちなみに、心臓の筋肉を栄養する冠状動脈が詰まり心筋壊死となるのが心筋梗塞です。
 
 脳梗塞には(A)ラクナ梗塞(Bアテローム血栓性梗塞(C)心原性塞栓性梗塞に分類されます。(A)は細い脳細小動脈が壁肥厚により詰まり、直径がせいぜい10mmまでの小梗塞巣を生じ、症状は軽く日本人に多く見られます。しかし、むしろ無症状のことが多いために無症候性脳梗塞とも言われていますが、存外に無視できなく、数が増えて多発性脳梗塞になれば脳血管性痴呆につながる恐れがあります。(B)は比較的太い脳動脈壁にコレステロールが沈着しアテローム硬化(粥状硬化)を起こし、血管内腔がデコボコ状に狭くなったところに血液がよどみ、遂には血液が固まり血管が少しずつ詰まり、徐々に梗塞を生じたもので症状は緩やかに出現します。一方、(C)は心弁膜症や心房細動などの不整脈にて心臓腔内で生じた血塊(血栓子)が脳に飛んで脳の血管を急に閉塞するために突然の発症となり、しかも極めて重篤になりやすい。長島氏の脳梗塞は(C)の塞栓症のようです。そして、その他にも一過性脳虚血発作(略してTIA)というのもあります。一過性脳梗塞とも呼ばれていますが厳密には脳梗塞ではありません。しかし、このTIAを知っておくことは大切なことでありますので後で詳しく述べることにします。
 
 脳は他の臓器とは異なり非常に血流に敏感であります。血流が途絶えると短時間で脳梗塞が完成してしまい、残念ながら脳は元に戻らなくなり、麻痺や様々な脳機能障害の後遺症を残す結果となります。しかし、早期に血流が再開通すると完全な梗塞には至らず、脳障害を最小限に食い止めることが可能となります。そのためには‘脳梗塞ではないか?’と疑った瞬間に病院を受診し早期に内科的治療(最近、血栓を溶かす‘優れもの’があります)を開始すれば麻痺や脳機能の回復が十分に期待できます。繰り返しますが、脳細胞が死んでからでは手遅れです!発症から早期受診・早期治療が脳梗塞には原則です。その為には早期受診するきっかけとなる脳梗塞の症状を知っておく必要があります。 脳には部位によって色々な脳機能分担があり、脳梗塞の発生部位によって様々な症状を呈します。 
 
 1、片側の手足の力が急に抜け物を落とす、歩けない(運動麻痺)

 2、片側の手足のしびれ(感覚麻痺)

 3、喋りたいことが話せない、相手の言うことが理解できない(失語症)

 4、急に呂律が回らなくなり、喋りづらい(構音障害)

 5、急なめまい、ふらつき、真っ直ぐに歩けない(急性失調症)

 6、物が二重に見える(複視)

 7、 片側が見えにくく、人によくぶつかる(視野障害)

などの症状が挙げられます。もし、これらの症状を自覚すれば一刻を争う緊急事態と考え、しばらく家で安静にして様子を見ようとはせず、直ちに病院を受診して下さい。

 
 そして、ここで一過性脳虚血発作(TIA)に戻ることにします。

 TIAとは1〜7のいずれかが一時的(多くは数分間)に出現するが、すぐ元に戻る一過性脳症状を指します。更に、片眼が一瞬真っ暗になるという一過性眼症状もあり、これらは気のせいかと見過ごされることがよくあります。実はTIAは脳梗塞の前ぶれであることが多く、この時点で病院を受診し対処されれば近々起りつつあった脳梗塞を未然に防止できる可能性があり、極言すればTIAはあなたの運命を左右する重要な予知サインでもあります。
 
  ところで、あなたは脳梗塞には予備軍が存在することをご存知でしょうか?即ち、高血圧・心臓病・不整脈・糖尿病・高脂血症(血液中のコレステロールや中性脂肪が多い人)・喫煙・毎日3合以上の飲酒・肥満・家族に脳卒中の人がいる、などは脳梗塞の危険因子と呼ばれ、立派な予備軍なのです。また、最近では過労やストレスによる発作性不整脈から塞栓性梗塞(長島氏型脳梗塞)が中高年に急増しつつあり注目されてきています。

  高齢化社会の到来にて今後、脳梗塞は増加の一途をたどると予想されており、脳梗塞の予防と再発防止に積極的に取り組む必要があり、今からでも持病のある方はコントロールをはじめ、食生活・喫煙・運動などの生活習慣の見直しを計ることが急務です。そして忘れないで欲しいのは草・ェ補給窒ナす。著しい発汗・発熱・下痢による脱水はドロドロ血液状態となり、脳の血管が詰まりやすく、十分な水分摂取か点滴治療が早期に不可欠となります。
 
 最後に米国の脳卒中予防10ケ条を記しまとめとします。
 
 1、高血圧のコントロール

 2、糖尿病のコントロール

 3、心房細動という不整脈のチェック

 4、高脂血症のチェック

 5、禁煙

 6、減酒

 7、低塩・低脂肪食とし肥満に注意

 8、運動習慣をつける

 9、脳卒中の危険性を増す循環器疾患のチェック

 10、脳卒中あれば即受診する


 

「たかが“咳” されど“咳”」

「たかが“咳” されど“咳”」

副院長 小林保雄

 
皆さんは咳を「たかが咳」と侮ってはいませんか?わずかな咳でも死に到らしめる危険な咳が存在することをご存知でしょうか?
 今回は様々ある呼吸器症状の中でも、ごく身近な咳から呼吸器の病気に迫ってみたいと思います。
 まず基本として呼吸の仕組みに触れます。人体ではエネルギーの産生のためには栄養だけではなく酸素も不可欠で、身体全ての細胞では酸素を取り込み二酸化炭素を捨てる一種の呼吸がミクロの世界でも営われています。その大体は呼吸器(肺)で、後述する肺組織に於いて呼吸が機能しています。
 そして呼吸器は以下の3部門から構成されています。

1, 気道(鼻腔、咽頭、咽頭いわゆる喉)

2, 下気道(気管、気管支、細気管支を指し、これらは順次樹枝状に分岐し細まります。)

3, 肺組織(肺実質とも言われ肺胞と間質からなり、それをゴム風船に例えると丁度ゴムの
部分が肺間質で、膨らんだ風船の内部が肺胞に相当すると考えて下さい。ゴム風船の延び縮みで空気の出入りを計り、肺には100分の6〜20ミリ単位の微小サイズのゴム風船、すなわち肺胞(肺組織)がブドウの房状に無数に存在し、ここで酸素を二酸化炭素とが、直接にガス交換が行われています。)

これらの部位にウイルスや細菌などの微生物が感染すると、それぞれ1,は上気道炎(いわゆる風邪です)2,は下気道炎(主に気管支炎です)3,は肺炎(通常の肺炎は肺胞での炎症を指し、肺間質の炎症は間質性肺炎と呼ばれ少し特殊な肺炎です)を生じます。
 やや前置きが長くなりましたが、今回のテーマ「咳」に戻ります。
そこで咳を一口で説明するならば、呼吸器の病変による分泌物や異物を取り除くために強制的に吐き出す生体防御反応の一つで、多くは痰を伴います。
 咳には風邪のように軽いものから肺癌、肺結核、間質性肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患の略で、慢性気管支炎と肺気腫を指します)など重篤で死に至らしめる病気まで含まれており、我々医師には初期の段階で咳を要する背景に存在する病気を見極めることが、大変重要な役目となってきます。
 ここで咳の見分け方になりますが、まず咳の起り方から、咳が急に生じた急性型と徐々に生じた慢性型とに分け、更に痰を伴うか否かによって、痰を伴わない空咳(コンコン咳)か、痰を伴う湿性咳(ゴッホン咳)かを区別します。そして湿性咳の痰が透明で粘液状の粘性痰なのか、黄色状の膿を混じった膿状痰なのか、血液を混じった血痰なのかを更に区別します。

これらの組み合わせから呼吸器の病気を概説したく思います。

1 急性型空咳:最も高頻度で見られるのが上気道炎(風邪)です。勿論、風邪でも治り
かけの頃には湿性咳となりえます。
他には胸痛を伴う場合には、自然気胸、ウイルス性か結核性胸膜炎が考えられます。

2 急性型湿性咳:やや大量の粘状痰やゼーゼーの喘鳴音、呼吸困難発作を示せば気管支
喘息と簡単に診断できます。
 ぞくぞくする悪寒を伴う急性発熱や全身倦怠感を示すものには、肺炎を疑います。そして、肺炎と類似し膿性痰を伴う場合には頻度は多くは無いですが、肺化膿症(肺膿瘍)もあります。
 ここでは急性の血痰を伴う湿性咳の中でも突然の胸痛や呼吸困難を示せば、取分け生命にかかわる肺塞栓症を考えねばなりません。下肢にできた静脈血栓が剥脱、遊離して肺に達し肺動脈を閉塞させ肺梗塞を生じる病気ですが、皆さんには「エコノミー症候群」として既にお馴染みかと思います。

3 慢性型空咳:初発症状が軽微なためいつごろからの咳かは判断をしない場合が多く、患者さん自身も大したことでは無いと思い込み長期にわたり放置されており、気が付いたら既に手遅れという大変厄介な病気によく遭遇します。
 実はこの慢性の空咳には危険な病気が潜んでいます。これには肺癌をはじめとし特発性間質性肺炎(肺線維症とも称される)、癌性リンパ管症(あまり聞き馴れない病名ですが、胃癌などが肺のリンパ管に転移する特殊な肺転移型です)が最も重要で、次に咳喘息(喘息準備状態)も軽視できません。
 ちなみに特発性間質性肺炎(肺線維症)の咳は、軽快することがなく延々と持続し、病気が進行すると息切れを示し、慢性気管支炎と誤診されやすいようです。また咳喘息は夜間から早朝に多く、気管支喘息の前段階と考えられており本格的な喘息への移行に十分な注意を払う必要があります。
 他にも降圧剤(ACE阻害薬)の副作用による咳や何かに対するアレルギー反応性咳、胃酸の逆流に起因する逆流性食道炎による咳、心因性咳も存在します。

4 慢性型湿性咳:この型の咳の多くは粘性痰を示し、主に慢性気管支炎・肺気腫(この両者をCOPDと呼び、その病原はタバコの喫煙歴と量に著しく関係し、大気汚染や老化も関与しています)や気管支拡張症があります。しかし、これらの病的気管支には細菌感染を合併しやすく、匂いのある黄色の膿性痰をしばしば呈してきます。
 そして血痰を伴う場合には肺癌や近年再流行しつつある肺結核を真っ先に考えるべきもので、これらもまた極めて危険な咳です。もっとも、気管支拡張症は日常診察において頻繁に血痰を呈するものですが、さほど重篤な病気ではありません。


 今日は“咳”から可能性のある気管支や肺の病気の探り方や、危険な咳の存在を知って頂きました。普段の咳をたいしたことでないとタカをくくっている貴方こそ、是非この際に医師に相談されてはいかがでしょうか?

「右下腹部痛について」

「右下腹部痛について」 
副院長 池渕雅成
 
 右の下腹部に痛みが出現する病気として、憩室炎・尿管結石・排卵痛を含む付属器炎・急性腸炎・小児の腸重積などがありますが、手術を必要とする病気としてパッと頭に浮かぶものは「盲腸炎(虫垂炎)」だと思います。 今こそ抗生剤を含む医学の進歩で、「あ〜あ〜、盲腸か」とか「エッ、盲腸?」との反応ですが、ついこの間(約100年位前)までは、「右の腹膜炎」として高率に死に至る原因不明の恐ろしい病気でした。「もうちょう」と呼び習わされる病気の本態は、盲腸の先端にある虫垂の炎症です。虫垂という臓器が人体に存在していることについて、西洋の解剖学者ガ−ビーとエスティーネらが初めて記載したのは16世紀のことです。また1542年に描かれたダヴィンチの解剖図にも虫垂が登場します。ただこの時点で虫垂というものが盲腸の先にある5cmばかりの短い紐(ひも)のような組織であるというだけで人に死をもたらすほど激しい腹膜炎の原因になると人間が想像に及ぶには更に200年以上の時間が必要でした。

 1812年「右側の腹膜炎」の原因が虫垂の炎症らしいと報告したのは病理解剖学者のパーキンソンです。しかしこのことが医学会に認められるのはずっと後になってからのことです。

 1845年歯科医ウェルズが笑気による抜歯を行い、1846年モートンがエーテルによる全身麻酔にて無痛の抜歯に成功。これら麻酔の進歩に合わせ1848年イギリスのハンコック、1865年レビス、1883年アメリカのパーカーがそれぞれ盲腸周囲炎により右下腹部に発生した膿瘍の切開手術に成功しました。しかしなお欧州医学会は盲腸周囲炎の治療は相変わらず下剤とアヘンが中心でした。

  1882年フランスの首相レオン・ガンベッタが在職中、「盲腸炎」になりました。フランスの一流の医師団の治療はやはり下剤の投与と体力増強のためのアルコール(ラム酒、ブランデー)更にマラリアの特効薬であったキニーネを投与、発症後約3週間にて死亡しています。現役の首相の病気に医学会の権威者達が総力をあげた結果がこれですから、普通の人々が盲腸周囲炎になったらどうだったか推してしるべしです。

  1886年新興国アメリカのハーバード大学、病理解剖学教授レジナード・ヘーベ・フィッツが、盲腸周囲炎で死亡した500人以上の患者さんを解剖し、盲腸周囲炎の原因が虫垂に根源があるとの結論に達しました。今から考えるとこれは画期的なことです。

アメリカ医学会協会での講演で、盲腸周囲炎の概念は誤りで虫垂の炎症がその本体であること、虫垂炎の治療は外科療法によらなければならないこと、炎症を起こした虫垂そのものを摘出しなければならないことを発表しましたがフィッツの主張は当時の一般の医者からはもちろん、一流の外科医からも賛同されませんでした。

 ヨーロッパの医学会はアメリカ以上にフィッツを無視しました。

 1887年、兄弟・息子を盲腸周囲炎で亡くしたジョージ・トーマス・モートンが世界で初めて虫垂が破れる前に虫垂切除術に成功しました。ジョージ・トーマス・モートンの父親がウイリアム・グリーン・モートンで1946年に世界初のエーテルによる全身麻酔に成功しています。更に1888年チャールズ・マックバーニーが7人の虫垂切除術を行ない6人に成功した事を報告しています。モートンらの報告に勇気づけられアメリカでは多くの外科医が虫垂切除術を試みましたが、大部分の患者が手遅れの状態であったため半分以上が失敗に終わっています。 抗生物質の無かった当時、腹膜炎が広範囲に起きてしまえばいくら虫垂を切除しても救命はできませんでした。

1889年アメリカ人医師ジョン・ベンジャミン・マーフィーはごく初期の虫垂炎を診断し、発症から8時間後に手術を施行し成功しています。その後マーフィーは虫垂炎の診断がつけばできるだけ早期に手術するという命題に懸命に取り組み8ヶ月の間に100人もの手術を施行したそうです。マーフィーはこの事を1889年のシカゴ医師会で講演しました。虫垂炎の治療の大原則は迅速な診断と手術であると・・・しかし若い国アメリカであっても医者たちは古い習慣にしがみつき軽い虫垂炎はアヘンと下剤で治るので手術は必要ない、発症後24時間の診断は困難だ、切開はお腹を触診して膿瘍を触れるまで待つべきだとされ、これまでの常識を根幹から覆すような考え方をおいそれと受け入れませんでした。  

 マックバーニーは虫垂炎の初期症状として鋭敏な圧痛点を発見し、現在に至ってもマックバーニー点と呼ばれ虫垂炎の早期の診断基準の一つになっています。


  マーフィーやマックバーニーの緻密な努力により次第に迅速な診断と手術の必要性がアメリカ医学会に浸透していきました。

 こうしてアメリカでは1900年頃から虫垂炎の即時手術が常識となってきましたが、ヨーロッパでは盲腸周囲炎の幻影から脱却できていませんでした。

 1901年エドワード7世は載冠式の12日前に腹痛を訴え盲腸周囲炎になりました。この時医師団は手術が必要との判断にて載冠式の後日、全身麻酔にて虫垂膿瘍の排膿を施行し、エドワード国王はかろうじて救命されました。  

 今では手術を要するけれどそれほど心配要らないとみなされる虫垂炎ですが、100年くらい前まではまだまだ恐ろしい病気でありました。

現在では早期診断にCT検査や超音波検査を併用し診断技術は非常に精度があがっています。また抗生剤の発展以来、必ずしも早期手術は必要でなく保存的治療でも治癒する症例数も増加しています。

 外科において「もうちょう」は「アッペ(虫垂のこと)に始まりアッペに終わる」と言われるぐらい様々な症状を呈し、かつ手術も簡単な症例から非常に複雑な症例まで多種多様ですが、当院では絶対に手術を必要とする症例、手術を施行したほうが早く治る症例、保存的治療で治癒する症例を出来るだけ正確に診断し、対処にあたっています。
 


 

「慢性硬膜下血腫について」

「慢性硬膜下血腫について」
副院長 池渕雅成


慢性硬膜下血腫(以後 慢硬)は頭部外傷後およそ2週間から1〜3ケ月経って硬膜下腔、すなわち頭蓋骨の内側にある硬膜といわれる厚い膜と脳を包むクモ膜という膜の間に血液が貯留する病気で、男性高齢者に比較的多く見られます。
 外傷以外の誘因としてアルコール多飲、脳圧の低下、感染、動脈硬化、貧血などが知られています。硬膜下腔にできた血液は次第に被膜に包まれ、硬膜下腔で血腫になります。硬膜下腔の血腫は普通吸収されず、被膜から繰り返す出血によりゆっくりと増大する特徴を有しています。その結果、意識障害、知能障害、頭痛、嘔気、片麻痺、失語など様々な症状が出現し、放置すると死亡することもあります。
 その治療法は、血腫を除去し脳の構造を正常に復元することです。術式には穿頭血腫洗浄除去術と開頭血腫除去術がありますが、普通は穿頭血腫洗浄除去術が行われます。これは局所麻酔後に約5cm の小さな頭皮切開を設けた後、頭蓋骨に約1.5cmの1つ、時には複数の穴を設けてその穴より血腫内容を除去します。
 その後、血腫腔を生理食塩水にて洗浄するという方法です。その穴を通して血腫腔にドレーンというチューブを挿入し手術を終えることもあります。
(近畿大学脳神経外科ホームページより参照)


今回私自身が「慢硬」で入院手術と、生まれて初めて外科の患者になりました。その時の体験談を紹介します。
2年前の雪が積もった正月、犬の散歩中に事件は起こりました。
交差点を渡った瞬間、凍った雪に足を滑らせ後頭部を強打、目から火が出るとはこのこと。2週間以上経っても頭痛はとれず「慢硬」も次第に大きくなりました。
 3月下旬友人の脳外科A教授に相談、前日に撮ったMRIを見るなり、〈早く手術しないと〉・・・
 5日後H大学脳外科に入院、翌日手術となりました。
 外来でバーコードの付いた腕輪をまかれ、血液検査・レントゲン検査・心電図に1階2階をウロチョロ、その後にバーコードを器械で読み取られます。何かスーパーマーケットの商品みたい。患者さんの取り違え防止のためには仕方ないかと思いますが・・・
 病棟に上がると看護師さんより入浴の指示。これがまた大変!
家では奥さんが、〈風呂入ったで〜〉〈はいよっ!〉で終わり。病院では、自分でお湯を入れて、あがると風呂掃除、慣れないことばかり・・・
 手術は朝1番、9時からストレッチャーで手術室へ、〈変な気分・・・〉
麻酔科の先輩のT教授も応援?に来てくれました。
左側頭部の剃毛(ていもう)、消毒、覆布(おいふ)掛け、さあ始まる!
〈少し痛いですよ−〉の声と共に局所麻酔の注射が始まる。実はここから後、A教授の〈池渕終わったよ−〉までほとんど記憶がない。一服盛られてたか?血腫の量は200cc位だった。
術後病室で主治医より〈明日朝までベッド上安静でお願いします〉と言われ、これが如何に辛かったか。ベッド脇の尿瓶に寝たままで小便なんて、サーカスです。〈福島へ帰ったら術後のベッド上安静を減らさなくちゃ−〉
朝という言葉を拡大解釈して(これは悪い政治家がよくすることですが)5時には歩いてトイレへ、術翌日はCT検査。また初めての車椅子移動です。途中に色々な視線が。〈オレって「脳腫瘍」と思われてるんやろうか?〉
CTの結果、院内歩行の許可が下り早速新聞を買いに売店へ。〈やっと一段落〉
そうなると今後は別のことが頭をもたげてきます。先ず食事が合わない、ベッドが狭く硬い、腰痛持ちには非常につらい。消灯時間が9時、こんな早よ寝られん!
術後3日目に退院許可が下り即刻退院。しかし、この時点で2ヵ月後に再度戻ってくるとは、夢にも思いませんでした。
A教授の指示通り定期的にMRI施行。なんと「慢硬」のやつがまた少しずつ大きくなりよる。てな訳で5月に再入院・再手術となりました。
今回は血腫吸引洗浄後ドレーンを入れることに。ドレーンは再度血が溜まりにくくするためのものです。
当然術後ドレーンからサラTラの血液が出るはず。それがそれが術後12時間経ってもほとんど出ない。自分が外科医だけに、これは気になって気になって、でも神様っているんですね。急にくしゃみが出たんです。するとドレーンからサラサラの血液が50cc くらいドッと出たではありませんか。〈ホッとしました〉
術後3日目CT後ドレーン抜去、挿入部に針糸をかけて縫われるんですが、これが麻酔なしです。〈痛いのなんの!〉
その後無事退院、再発もなく元気になりました。