医療法人 永寿会  福島病院
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生活習慣病について考える

「タバコの害」

「タバコの害」
 
〜癌、脳卒中、心筋梗塞にならないために。
   健康寿命を伸ばすために〜
 
副院長 高橋栄男
 
 日本人の平均寿命は男性77歳、女性84歳に達しています。しかし、3人に1人は脳卒中、心筋梗塞などの動脈硬化疾患にて亡くなります。4人に1人は癌で亡くなります。これらの疾患を予防する事が、寿命、健康寿命を伸ばす事になります。

 高血圧、糖尿病、高脂血症、タバコの内、最も、癌、動脈硬化に影響するものはどれでしょうか。実はタバコなのです。

 タバコを吸う男子は、統計的に、1.6倍、癌になりやすい。日本男子はタバコを吸う人が多いので、日本人男性で発生している癌の30%はタバコが原因となります。年間28万人のうち8万人が、タバコが原因なのです。女子は1.5倍癌になりやすくなる。しかし、タバコを吸う人が少ないので、年間20万人発生する癌のうち、8000人が、タバコが原因と計算されます。

 タバコを吸う人、吸わない人、各100人の40歳の人が75歳になるまでにがんになる確率を計算すると。タバコを吸わない人100人のうち20人がなんらかの癌になり、1人が肺癌になります。タバコを吸う人100人のうち、32人が癌になり、5人が肺癌になります。タバコを吸っても95人は肺癌にならないのですが、肺癌は5倍、癌全体で1.6倍になるわけです。

 動脈硬化への影響はどうでしょう。NIPPON DATA80によると、1日21本以上タバコを吸う30歳以上の男性の心筋梗塞死リスクの大きさは4.25倍。重症高コレステロール血症は3.9倍。重症高血圧は2.66倍であった。JACSS研究では心筋梗塞リスクの増加度は、男性で、高血圧4.8倍、喫煙4.0倍、糖尿病2.9倍、高コレステロール血症1.5倍。女性では、喫煙8.2倍、糖尿病6.1倍、高血圧5.0倍、高コレステロール血症は有意関連なしであった。タバコは動脈硬化にも大きな影響を与えるのです。

 スウェーデン男性を30年以上追跡した研究によると、全死亡を、喫煙は1.92倍、糖尿病は1.64倍、高血圧は1.55倍、メタボリック症候群は1.36倍、高コレステロール血症は1.10倍と報告されています。

 タバコは肺気腫、慢性気管支炎などの肺の病気も増加させます。
 
タバコが止められない理由は何でしょう

まず、上に述べたような、タバコの重大な被害が軽く見られている。

 禁煙に失敗して諦めてしまう。しかし、禁煙に成功した人でも、3回程度失敗している事が多いのです。

 タバコを20本以上吸う人や、タバコを吸えないとイライラする人はニコチンの影響が考えられる。ニコチンガムやニコチンパッチを使用するとイライラなどを減らせる。

 あとは、刺激の強い食事、飲酒はタバコを吸いたくさせるので、そのような機会を避ける。食後は吸いたくなるので、すぐ席を立つ。吸いたくなったら、歯磨き、ガム、野菜スティック、冷たい水、お茶などで、やり過ごす。

 タバコを止めて、初めの3日間、1週間、2週間がきついでしょうが。それを過ぎると、だるさが取れ、咳、痰が減る。味覚が良くなり、肩こり、肌荒れなどが良くなってくるでしょう。

何度でも禁煙にトライしましょう。健康寿命を伸ばしましょう。
 
 本文は、日本医事新報 松崎道行氏、No4307
津金昌一郎氏の論文を多く参考させて頂いています。 


 

「高血圧を放っておくとどうなるか」

「高血圧を放っておくとどうなるか」
〜健康寿命を伸ばすために〜
副院長  高橋栄男
  日本人の平均寿命は80歳近くに達しています。しかし、健康寿命は約5−6年間短く、その間は入院したり、寝たきりになることが多いのです。日本人の3人に1人は心筋梗塞、脳卒中、つまり、動脈硬化で亡くなります。動脈硬化の一番の原因が高血圧なのです。高血圧患者さんは高血圧で亡くなるのでなく、動脈硬化を早く、強く起こし、心筋梗塞、脳卒中のため、早く、寝たきりになり、亡くなるのです。また、高血圧は将来の認知機能を悪化させる(痴呆)報告も あります。 
 
動脈硬化とはどのような病気なのでしょうか。

 動脈は体中に血液を運ぶパイプです。血液は全身に、栄養、酸素を運び、そして、老廃物、二酸化炭素を持ち帰ります。年を取ると、動脈硬化が起こり、そのパイプが詰まるのです。

 
高血圧とはどのような病気でしょうか。全身に、特に、脳に血液を送るために、ポンプが必要です。心臓は握りこぶし大の大きさで、1回に約80ccの血液を送り出します。1分間で、約5リットル。1日で約10万回拍動しますので、約7000リットルの血液を送り出します。500ccのペットボトルで、14000本ですね。血圧はその圧の高さなのです。血圧の単位であるmmHgは水銀をミリメートル持ち上げる圧力を示します。水銀の比重が、13.6g/mlなので、120mmHgの血圧を単純に表現すると、13.6×120mm=1632mm。水を1632mm、つまり、1.6m飛ばす圧力なのです。120mmHgで1.6m。140mmHgで1.9m。160mmHgで2.2m。180mmHgで2.45m。200mmHgで2.7mです。それだけの圧力が心臓、動脈に、1日10万回掛かっているわけです。心臓、動脈も大変丈夫にできているのですが、少しづつ傷みます。10年、20年になると、その差が出てくるわけです。

 
120/80mmHg未満が至適血圧、130/85未満が正常血圧、140/90未満が正常高値血圧、140/90〜160/100未満が軽症高血圧、160/100〜180/110未満が中等症高血圧、180/110以上が重症高血圧となります。血圧が120mmHgを越えるあたりから、脳卒中や心筋梗塞に罹る危険が高くなってきます。上の(収縮期)血圧が140mmHgで120mmHgの約2倍になります。160mmHgにて約3倍、180mmHgで約8倍に危険性が大きくなります。よって、140mmHg未満を目標と決めています。糖尿病や腎障害患者では、高血圧の影響がさらに強く、130/80mmHg未満が目標になります。

 朝食前にトイレを済ませ、安静にしてから、測定してください。夜は寝る前に、トイレを済ませ、安静にして測定してください。測るたびに値が違うときは、3回測定し、一番低い値を測定値とします(高血圧学会推奨:1〜2分間隔で測定し、差が5mmHg未満となった時の、2回の平均値)。動脈硬化予防のためには、家庭で、毎日測定した血圧の平均値が一番参考になります。血圧は容易に変動します。病院に来るだけで上がる人もいます。月に1回、病院で測定した血圧より、家庭血圧の方が大切なのです。もちろん、毎日でなくても結構です。普段の血圧が大切なのです。病院で高くても、家庭血圧が良ければ、薬は増やしません。

 血圧は生活習慣に影響されます。食べすぎ、肥満、塩辛いもの、アルコール、運動不足、喫煙、野菜不足、ストレスなどです。生活習慣を改善すると良いのです。塩辛いものは避ける。うどんやラーメンの汁は飲まない。1日塩分7g以下が理想です。腹8分目に食べる。おかずはお肉より、魚、豆腐を増やす。野菜をたくさん食べる。体重を増やさない。お砂糖は控える。毎日30分以上に散歩をする。お酒は減らす。タバコは吸わない、などです。す。

 30歳代から、肥満、運動不足になり、40歳代から、高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化になり、50歳60歳代に、脳卒中や心筋梗塞になるのです。30歳代で、肥満、運動不足にならなければ、そのような危険性は非常に小さくなるのです。

 重症高血圧は速やかに降圧薬開始します。中等症高血圧は1ヶ月ほど、生活習慣の改善を
試み、血圧の改善がなければ、降圧薬を開始します。軽症高血圧は3ヶ月ほど、改善に努めて、改善がなければ、降圧薬を開始します。糖尿病、腎障害ある場合は速やかに降圧薬を開始します。

 降圧薬の種類ですが、レニンアンジオテンシン阻害薬、カルシウム拮抗剤、少量の利尿剤、ベーターブロッカー、アルファーブロッカーが基本になります。料理の調味料と同じで、多種類の薬を少しずつ併用する方が、降圧効果も高く、副作用も少なくなります。生活習慣の改善も合わせて、充分に降圧することが大切です。とくに、糖尿病、腎障害がある患者は血圧を充分に下げると、予防効果は大きくなります。レニンアンジテンシン阻害薬は血圧を下げるだけでなく、心不全、腎不全の進行を抑制し、新規発症の糖尿病をも抑制します。カルシウム拮抗剤は降圧力が強く、有意義です。利尿剤は半錠程度併用することで、降圧効果を強め、副作用を少なくします。1錠以上使用すると、副作用が目立つようになります。ベーターブロッカーは狭心症や心筋梗塞の再発を抑制します。ごく少量より、注意深く使用することで、心不全の改善効果があります。アルファーブロッカーは前立腺肥大症にも有効です。
 
ではどのような人が脳卒中、心筋梗塞になりやすいのでしょうか?
1.既に、脳卒中や狭心症、心筋梗塞に罹ったことのある人はすでに全身の血管が痛んでいる
   ので、健常人の、約5倍から15倍なりやすい。
 
2.加齢、高血圧、糖尿病(糖尿病前段階を含む)、喫煙、家族歴、高コレステロール血症などが    強い動脈硬化の原因になります。
 
 一つで2倍、二つで4倍、三つで8倍、四つで16倍、なりやすくなります。

血管を傷める原因をすべて、治療することが大切です。血圧、血糖、高脂血症を十分に治療し、禁煙することです。自覚症状に頼ってはいけません。検査を受け、血圧を測ることです。血圧の薬をたくさん飲んでも十分に下げた人が健康寿命が長くなります。失敗しても良いですから禁煙にトライしましょう。
 
 70〜75歳まで、脳卒中、心筋梗塞にならず、寝たきりにならないようにしたいものです。
 


 

「糖尿病」

「糖 尿 病」
副院長 高橋栄男

  糖尿病という病気は、血液中のブドウ糖(血糖)の量が多くなりすぎ、その結果、次第に全身の血管に影響を及ぼし、眼や腎臓、神経、脳、心臓など全身に障害を起こす病気といえます(細小血管障害、動脈硬化)。ブドウ糖は大切ですが、多すぎると体に良くないのです。

 原因は、胃の裏側にある膵臓で作られるインスリンというホルモンが不足し、その働きが不十分(肥満、運動不足、ストレス)になるからです。インスリンは体に取り込まれたブドウ糖が、細胞の中に取り込まれてうまく利用されるのに大切であり、その結果、血糖を下げます。
  症状は多尿、頻尿、口渇、急激な体重減少、倦怠感等ですが、自覚症状のない人の方が多く、自覚症状がないからと安心はまったくできません。逆に血糖が良くなってから、軽くなった、喉も渇かないと自覚する事が多い。血糖検査が必要です。

  急激
な高度のインスリン不足は血糖の著しい上昇、ケトアシドーシス(尿ケトン強陽性、酸血症)、高度脱水の結果、糖尿病昏睡(意識不明)を起こす。

 慢性的に続く高血糖や代謝異常は細小血管障害を引き起こす。つまり、全身の毛細血管を傷害される。血糖が高い(HbA1cが8以上)と、神経障害は5年後、網膜症は7年後、腎症は15年後位に起こる。動脈硬化(脳卒中、心筋梗塞、壊疽)も進行する。一旦出ると、なかなか治らない。また、血糖が高いと傷の治りも悪い。10年以上経ってから困る。  
 

1.細小血管障害

*神経障害
末梢神経には多くの毛細血管が絡み、栄養している。手先の痺れ、激痛、下痢、便秘、立ち眩み(起立性低血圧)、インポテンツ。5から6年後に始まる。

*網膜症
網膜は眼の底のカメラのフィルムに当たる神経。人間は視野の中心が見えていれば、端で起こっていることは気がつかない。中心(黄斑)に出血が広がると、急激に視力が低下し、回復は難しい。単純性網膜症では3から6ヵ月毎、前増殖性網膜症は2から3ヵ月毎に診察が必要。増殖性網膜症では光凝固が必要。光凝固は視力を回復するためではなく、これ以上悪化しない様に、広がらない様に、焼き固めるようなもの。糖尿病患者は6から12ヵ月毎に眼科診察が必要。糖尿病のために、毎年、4千人の日本人が新たに失明している。3ヶ月毎の診療はむしろ変化ある事になる。

*腎症
腎は100万個の糸球体(毛細血管の塊)から成る。微量アルブミン尿の段階なら、可逆的ですが、顕性蛋白尿になると非可逆的(悪化が止まらない)となる。血糖と血圧のコントロールが非常に大切。蛋白尿が出ていると、腎症は始まっている。腎機能が悪化しだすと早い。毎年、1万3千人の日本人が、新たに、血液透析が必要となる。
 
2.動脈硬化

* 脳卒中
脳梗塞(脳の血管が詰まる)、脳出血(脳の血管が破れて出血)。半身麻痺になることが多い。死亡数は減っているが、発症はむしろ増えており、著しくADLを低下させる。

*心筋梗塞
心臓の血管が詰まり、その部分が動かなくなる。糖尿病患者は多枝病変(一度に、多くの血管が障害されている)、高度狭窄が多く、死亡率も高い。助かっても息切れ、動悸が残ることが多い。

*壊疽
手足の循環障害のため、壊死、ミイラ化する。四肢の切断が必要になる事が多い。

治療目標
 
  優    可(不十分) 可 (不良) 不可
空腹時血糖 110未満 110〜119 120〜129 130〜149 150以上
食後2時間血糖 140未満 140〜169 170〜199 200〜249 250以上
HbA1c (%) 5.8未満 5.8〜6.4 6.5〜6.9 7.0〜7.9 8.0以上

  HbA1c(ヘモグロビンA1c):高血糖が続くと、赤血球内のHbがブドウ糖と結合する。その%を表す。赤血球の寿命が120日なので、およそ、1から2ヶ月の血糖コントロールの目安となる。 HbA1cが5.8未満なら、糖尿病の合併症(細小血管障害、動脈硬化とも)は、殆ど起こらない。HbA1cが6.5以下なら、細小血管障害は、殆ど起こらないが、動脈硬化は進行させる。HbA1cが8.0以上なら、細小血管障害、動脈硬化とも進行させる。


 現在の日本人は食べ過ぎで、肥満患者、高血圧、高脂血症、糖尿病患者が激増している。 高血圧、高血糖、高脂血症、喫煙が揃うと、脳卒中、心筋梗塞に、10〜16倍、なり易くなる。但し、病気になるのは10年位、あとになるので、危機感が出ない。倒れてから、入院するよりは将来の健康を今から自分で守りましょう。。血糖のみならず、血圧、コレステロールを充分下げ、禁煙する事が肝要。下げられるところからどんどん下げましょう。
 
高脂血症
コレステロールは非常に良い薬ができています。1錠、飲むだけで、脳卒中、心筋梗塞を1/3以上予防できます。

高血圧治療
糖尿病患者には高血圧の合併が多い。高血圧の治療が、予想以上に動脈硬化性疾患(脳卒中、心筋梗塞等)、全死亡を減少させ、しかも、糖尿病網膜症をも減少させる。一般の血圧目標値は140/90mmHg以下だが、糖尿病患者は130/80mmHg以下が目標。そのため、多種、多剤の降圧剤を使用することも多い。まず、血圧を十分に下げる。但し、ゆっくりと。できれば、ACE阻害剤(アンギオテンシン転換酵素阻害剤)の併用が望まれる。ACE阻害剤は血圧低下度以上に合併症を予防するデータが多い。糖尿病腎症、糖尿病網膜症の予防、進展阻止作用を有する。

  腹8分目、和食中心、適正体重、適度の運動量を保つ事は、糖尿病患者だけではなく、健康な人でも望ましい事です。健康寿命を伸ばすためにも、糖尿病患者さんは率先して、健康的な生活を送りましょう。 
タバコは脳卒中、心筋梗塞だけでなく、発ガンにも大きな影響を与えています。  


 

「肥満になるとどうなるか。代謝症候群とは何か」

「肥満になるとどうなるか。
       代謝症候群とは何か」
〜脳卒中、心筋梗塞にならないために。健康寿命を伸ばすために〜
副院長 高橋栄男

 日本人の平均寿命は男性77歳、女性84歳に達しています。しかし、健康寿命は約5〜6年短く、その間は入退院を繰り返したり、介護を受けて生活しているのが現状です。しかし高血圧、糖尿病、高脂血症を治療しないと5〜20年早く脳卒中や心筋梗塞になってしまいます。例えば糖尿病患者さんの平均寿命は男性、女性とも70歳未満と言われています。日本人の死因の1位は癌ですが、2位3位は心臓疾患、脳卒中です。つまり約3分の1以上の方が動脈硬化による疾患で亡くなられるのです。
 
動脈硬化とはどのような病気なのでしょうか。
 
 動脈は体中に血液を運ぶパイプです。血液は全身に栄養、酸素を運び、そして老廃物、二酸化炭素を持ち帰ります。長年経過すると、そのパイプがだんだん詰まったり、漏れたりするのです。完全に詰まるとその部位の細胞が死んでしまうのです。脳なら脳卒中、半身麻痺になります。心臓なら心筋梗塞になり、死亡したり助かっても息切れが残ったりします。
 
ではどのような人が脳卒中、心筋梗塞になりやすいのでしょうか?

1.既に脳卒中や狭心症、心筋梗塞に罹ったことのある人はすでに全身の血管が
  痛んでいるので健常人の約5〜15倍なりやすい。

2.高齢者、高血圧、糖尿病(糖尿病前段階を含む)、喫煙、家族歴、高脂血症
  などが強い動脈硬化の原因になります。
  1つで2倍、2つで4倍、3つで8倍、4つで16倍、健常人よりなりやすくなります。
  しかも糖尿病は1つで3つ分の影響があると考えられ、糖尿病が1つあるだけで
  2から8倍なりやすいのです。
 
ではどのような人が高血圧、糖尿病、高脂血症になるのでしょうか。

 
加齢にて起こりやすくなります。これらは避けられないですね。他に遺伝や疾患があるのですが重要なものとして過食、運動不足、肥満(特に内臓肥満)があります。これは特殊な人でなく、誰でも過食、運動不足、肥満によって、高血圧、糖尿病、高脂血症が起こりやすくなるわけであり、これに相当する人が爆発的に増加しているわけです。日本では1960年ごろから過食、肥満、自動車の普及が起こり、その約20年後から糖尿病患者さんが激増しだしました。個人でも30歳頃から体重が増えだします。40歳50歳代から糖尿病患者さんが激増しています。つまり、過食、運動不足、肥満により高血圧、糖尿病、高脂血症が発病するまでに、10年から20年掛けるわけです。しかも重要なことは、その間に動脈硬化も静かに進行するのです。糖尿病,高血圧,高脂血症になってからも動脈硬化は強く進行するのですが、その前に既に動脈硬化が進行するわけです。30歳代から肥満、運動不足になり40歳代から高血圧、高脂血症、糖尿病,動脈硬化になり,50歳60歳代に脳卒中や心筋梗塞になるのです。30歳代で肥満、運動不足にならなければ、そのような危険性は非常に小さくなるのです。可能なら30歳代から肥満、運動不足に気を付け、病気にならないようにしたいものです。
 
 過食、運動不足はエネルギーの過剰となり脂肪細胞に中性脂肪として蓄えられます。脂肪細胞から多くのホルモンが分泌されることが発見されました。特に内臓周囲に増大した脂肪細胞からは、血糖や血圧を上げるホルモンが分泌され、また動脈硬化を予防するホルモンの分泌が少なくなることが分かってきました。初めのうちは膵臓が大量のインスリンを分泌し血糖が上がらないように頑張っていますが(インスリン抵抗性)、その内インスリンが出せなくなってくると糖尿病が発症してきます。糖尿病が発症すると全身の血管の傷みが加速されます。10年20年後には合併症(眼底出血、腎不全、神経障害、脳卒中、心筋梗塞、壊疽:全て血管の障害)に苦しむわけです。しかし先に述べたように糖尿病が明らかになる頃には、全身の動脈が既に傷ついているわけです。しかも糖尿病だけでなく高血圧、高脂血症も同じ人に同時に発症しやすいわけです。体重の重さも大切ですが、内臓肥満(腹囲)がより発病予想に有効であることが報告されました。

 皆様は脳卒中や心筋梗塞になってから病気になったと思われるわけですが、実際には10年20年以上前から静かに病気は始まっているわけです。それで高血圧や糖尿病,高脂血症がサイレントキラー(静かな殺し屋)と呼ばれるわけです。

 もう一度申し上げますが、過食、運動不足により肥満特に内臓肥満が続くと、いずれ高血圧、糖尿病,高脂血症が同じ人に発症し、脳卒中や心筋梗塞に罹るリスクが高くなります。そのことを代謝症候群と呼ぶわけです。そしてそれは特別な人ではなく誰にでも起こりうることなのです。
 
代謝症候群  診断基準
 
腹部肥満(ウエスト周囲長,臍の高さ):男性85cm以上、女性90cm以上があり
1.トリグリセリド(中性脂肪):150mg/dl以上 もしくは
HDL(善玉)コレステロール:40mg/dl以下
2.血圧:収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上
3.空腹時血糖:110mg/dl以上               

3項目中2項目が異常なら代謝症候群と診断される。

 高BMI、高血圧、高血糖、高中性脂肪の内、危険因子が3個以上あれば虚血性心疾患に罹るリスクは30倍になる。高血圧、高脂血症、糖尿病の治療は必要ですが,肥満の解消は血圧、血糖、脂質を改善させます。また高血圧、高脂血症、糖尿病になっていない人も肥満を解消することで、将来の高血圧、高脂血症、糖尿病の発症を押さえられます。腹8分目の和食、毎日30分以上のウォーキングは肥満の解消に非常に有効です。70〜75歳まで脳卒中、心筋梗塞にならず、寝たきりにならないようにしたいものです。

 


 

「肥満症解消のための1200kcal、3ヶ月大作戦」

「肥満症解消のための1200kcal、
3ヶ月大作戦」
副院長 高橋栄男

 京都府立医科大学附属病院吉田俊秀教授の勧めるカロリーブックや電卓のいらない挫折しずらい肥満症治療のポイントを多少改変して紹介します。吉田氏は標準体重まで下げるような肥満症の治療の必要はなく、3ヶ月間でほんの10%、脂肪の量を減らして、あとは運動で体重を維持でき健康な肥満になれば病気に関係するホルモンの分泌は全部正常化すると述べています。
 
方法 減量のポイント コメント
食事療法
1200kcal
●砂糖は止める
 (低カロリー人工甘味料はOK
●油類は極力減らす
悪い習慣が3時のおやつ。
まず「甘いものは一生やめてしまえ!」と言っています。
そして今までどの位砂糖をとってきたのかを具体的に計算してみるのも大切です。
ちなみに7000kcalが体重1kgに相当します。脂類もほとんど必要ありません。脂なら体に一杯あります!フッ素加工のフライパンを使い油を節約します。
蛋白質70gは必須

果物は握りこぶし大(100g)
    2個

米飯茶碗3分の2杯(120g)
   を1日3回
最低蛋白質70gはとらないと筋肉がおち基礎代謝低下しエネルギーが燃えなくなり危険であり、リバウンドの原因にもなります。具体的には1日牛乳1本、鶏卵1個、魚80g(刺身5切れ相当)、肉80g(テレホンカード大の厚さ7、8枚分つまり2mm強で脂肪の少ないもの)、豆腐半丁です。
●食前に生野菜を大量に10分間かけて食べるのがコツ 1日当たりキャベツを半分位、毎食前に10分間キャベツの千切りを一杯食べます。小皿に少しずつとり分け多種類のノンオイルドレッシングで食べ分けると飽きがきません。ドンブリ一杯分よく噛み脳の満腹中枢を刺激します。便通も良くなりシワ1つなしに痩せられます。野菜ならお腹が減って寝られない夜に食べてもOK。バケツに一杯食べてもたった80kcalです。
運動療法 ●食後30分後1日3回
    30分間歩く
1万歩を歩くと標準体重の人で350kcal位、太った人で450kcal位で大体まんじゅう1個分に相当します。
可能ならば30分歩けばいいし足が悪かったら10分でも5分でもOK。毎日習慣にする事が大切で殆どの太る人は食べた後ゴロッとしていてそれが悪い!
運動で痩せるには最低5千歩が必要で3千歩位から始め1年位かけて1万歩へと徐々に増やす事。買い物は食後に行くこと!
行動療法 ●どか食いはだめ、1日3回
   かならず食べる

●早食いはだめ、20〜30分は
    かける

●夜8時以降は食べない。
    ただし生野菜と水は可

●ストレスを発散させる
ストレスを抱えた人は一旦体重が減ってもすぐにリバウンドします。誰かにいじめられたとかけんかしたとかは甘いもの食べてごまかせるんですね。<span lang="EN-US">3ヶ月に1つは次のストレスがたまりますし食事療法もストレスに加わります。自分でもストレスを見つけてそれを何とか食以外で発散させる方法を見つけることです。誰か相談する人を探してストレスを解消することが先決なんです。
札幌厚生病院循環器科のホームページ より抜粋   http://www.gik.gr.jp/~skj/


 

「喘息(ぜんそく)と肺気腫(はいきしゅ)」

「喘息(ぜんそく)と肺気腫(はいきしゅ) 

副院長 高橋栄男


喘息治療は吸入ステロイドを中心に進歩しています。喘息による、入院、死亡は大幅に減少しています。しかし、ステロイド吸入を充分に使いこなせずに、治療が不十分な患者さんがまだまだ多く見られます。

 喘息はどのような病気なのでしょうか。 

健康な人の気道は、炎症(腫れ)がないので、気道は広く確保され、粘膜表面の細胞も規則正しく並んでいます。しかし、喘息の患者さんの気道は、症状がないときでも、慢性的に炎症が続いているため、粘膜がむくみ、健康な人より狭くなっています。粘膜表面の細胞は荒れてはがれ落ち、さまざまな刺激に対して発作を起こしやすくなっています。そのため、咳や、痰が多くなります。
喘息の診断は特徴的な、喘鳴、呼気延長(息を吐くのに時間が掛かる)、シーソ呼吸(息を吸う、吐くのがスムーズでないので、胸を腹が逆の動きになる。重症のとき)。症状の動揺性など。原則可逆性あり(元に戻る。レントゲンやCTにて肺の損傷がない)。アレルギーの関与が強く示唆される。

 治療は大きく2つに分けて考えます。 

リリーバー: 
発作を速やかに和らげるために症状があるときだけ使用する薬。但し、1回2吸入、1日3回までで、改善しないときは速やかに受診しましょう。少し楽になったが、また、苦しくなったと連用していると、動悸、不整脈や喘息の重症化により、喘息死になりかねません。短時間作用性吸入β2刺激薬など。

コントローラー: 気道の炎症(腫れ)を治療したり、気管支を長時間広げたりして発作のない状態を維持するための薬。ICS(吸入ステロイド薬)。長時間作用性β2刺激薬(吸入/貼付/ 経口)。抗アレルギー薬。テオフィリン徐法製剤発作を楽にするリリーバーはもちろん重要でありますが、発作が出ないようにするコントローラーはリリーバーにまして重要であります。炎症が残っていると、気道粘膜に慢性変化が進行し(リモデリング)、発作が重症となり、遷延するようになります。但し、効果発現に数日掛かることが多いです。すぐには効かなくても、1週間、1ヶ月すると、発作が減り、普段も楽になってくるのです。

ピ−クフローメーター: コントロールの状況を知るのに重要なのが、ピークフローメーターです。高血圧の患者さんが血圧を測るように、糖尿病の患者さんが血糖を測るように、喘息を測る器具なのです。しかも、簡単で安く、家庭でも測れます。喘息は気道が腫れ、細くなり、息が吐きにくくなる病気なので、息を吐く速さを測るのです。当院で、外来治療を継続される患者さんには無料で貸し出しています。ちなみに私は600程度出ます。この値は、身長と年齢から、正常値が定められており、患者さんの数字がその80%以上を維持するのが治療目的となります。ところが、60%程度でも、喘息は出ていないから、治療をしなくても良いと勘違いされている患者さんが多いのです。確かに、普段と変わらないから、喘息は出ていないと感じているのでしょうが、治療して、改善されると、そういえば、息切れがなくなったとか、咳が減ったなどと気付くのです。さらに、80%(80点と言い換えます)以上あれば、発作が出ても、まだ、余裕があるので、夜間に救急病院に行ったり、入院したりする事が非常に減るわけです。ピークフローメーターを使う事で、日常での喘息状態が把握できます。症状が出る前に気が付くし、早く手当てすれば、救急に掛かる事も減るし、慢性炎症を減らす事は、5年10年後のコントロール状態を大きく改善させるのです。80点以上が青信号、60−80点が黄信号、60点未満が赤信号と考えてください。
 ステロイドは体で作られている、大切なホルモンです。体への悪い影響を和らげる作用があります。その一つが抗炎症作用です。しかし、大量を長期に使用すると副作用が強く出ます。必要があれば、使用しなくてはいけないのですが、吸入ステロイドは点滴や、飲み薬の1/100以下の量を使うので、副作用は非常に少なくなっています。しかし、吸入方法を習い、しっかりと肺に中に入るようにしないといけません。吸入後うがいをして、口に残った薬剤を廃棄します。口や喉に残っても、効果より、副作用の方に回るわけです。しかし、重症発作時は、点滴でステロイドを使用し、早く、改善させ、その後、出来るだけ早く、吸入ステロイドに切り替えるようにします。また、発作時や旅行時のために、ステロイドを3日分だけ患者さんに渡しておいたりします。
 中等度以上に喘息患者は、吸入ステロイドと他の薬剤を、適宜併用し、治療効果を高めるようにします。まずは、充分量の吸入ステロイドを使用し、改善できるところまで、改善させ、それを1から2ヶ月維持し、徐々に減量するのが上手な方法です。最終的に、改善、安定しても、1日、1吸入残す方が、長期に安定する事が多いようです。勝手な減量は良くありません。


 肺気腫 

肺気腫は、主にタバコにより、肺の組織が壊され、息が吐きにくくなる病気です。咳、痰が増え、喘鳴や息切れを伴うところは喘息と良く似ています。しかし、可逆性が乏しく(改善しにくい)、進行すると、息切れがひどくなります。すぐに、禁煙しましょう。治療は、喘息に似ています。但し、気管支拡張薬として、抗コリン剤が加わります。また、ステロイドの効果は限定的で、喘息ほどは効果は期待できません。しかし、肺気腫と喘息の合併はしばしば見られます。気管支拡張薬とともに、ステロイド吸入薬を試してみて、どこかまで、改善されるか、診ることは非常に大切です。意外に改善する人が多いのです。先のピークフローで、50%以下の人は、少しの改善でも、自覚症状はそれ以上に改善する事が多いのです。吸入ステロイド、ピークフローを使って、改善を試みてはいかがでしょうか。


 両者に共通するのは、禁煙の重要性です。 

風邪に罹らないようにする。インフルエンザ予防接種を受ける。喉を冷やさない、乾かないように暖房、加湿に気を使う。但し、喘息はアレルギーの関与もあるので、清掃にも気を付けましょう。喘息のコントロールが良くない場合はペットにも注意しないといけないかもしれません。
 普段から、ピークフローメーターを使用し、病状をよく把握することです。自覚症状だけでなく、早めに症状の悪化に気付くことは入院を大幅に減らします。吸入ステロイドを使用し、ピークフローメーターで、管理し、いつも、良い状態を維持することが、10年、20年後の病状安定にも繋がるのです。
発作を押さえる治療から、出さない治療へ。 これまで喘息の治療は、発作が出たときにそれを抑える治療に重点が置かれていました。しかし、喘息の原因の一つである気道の炎症は、慢性的に続いています。最新の喘息治療は、症状がないときでも、炎症の治療を継続する「発作を出さない」治療法へと進んでいます。気道の炎症は気道の火事と同じです。早くきちんとした治療をすることで大火事にならなくてすむのです。

 

水分管理

水分管理
副院長 高橋栄男

 人は、のどが渇けば水を飲み、尿が出ます。それらは自働的にコントロールされ、脱水や浮腫みが出ることはありません。
 水の入る方は、食事から約1000cc、飲み物として約1000cc、代謝水(体で、エネルギーを作る時に約300ccの水ができる)などがあり、出る方は、汗が約400cc、便が200cc、息からが約500cc、尿が約1200ccとなっています。
 下痢や汗を多く掻いたときは、その分、水を多く飲まないと脱水になります。しかし、高齢者で、のどの渇きが分かりにくい人などは、飲水が不十分で脱水になります。そして動けなくなり、さらに脱水になります。
 下痢がひどい人も脱水になる可能性があります。
 血糖の高い人が、多飲になるのは、尿が多くなるため、脱水にならないように、体が反応しているからです。
 
 一方、次のような病気の場合、尿量が少なく、体が浮腫んだり、胸やお腹に水が溜まる場合があります。

(1)心不全:心臓が弱るために、腎臓に充分血液を送れずに、尿が減り、余分な水が溜まります。浮腫み、心拡大、肺うっ血、肺水腫などがそうです。
(2)肝硬変:肝臓が硬くなり、胃腸を通った血液が肝臓を通って、心臓に帰れなくなります。また、アルブミンという大切な栄養が低下するために、お腹に水(腹水)が溜まります。
(3)腎不全:尿が作りにくくなり、浮腫んだり、心拡大、肺うっ血、肺水腫が起こります
 
1、体重を計りましょう。
 水分の多少は、体重に敏感に反映されます。肥える、痩せるも体重に影響しますが、数日で2〜3kg肥えたり、痩せたりする事は稀です。体調の良い時の体重を知り、プラス、マイナス1kg程度に維持したいものです。体重は毎朝、排便排尿後に計り、記録しましょう。そうすれば、脱水(体重減少、皮膚がかさかさ、しわしわ、体がだるい、ひどくなると立ちくらみ、食欲不振)や、浮腫み(体重増加、特にすねに圧痕が残る、ひどくなると、腹水や肺うっ血になります)が出る前に気付くことができます。

2、塩分を控えましょう。
  塩は水を引き寄せます。しょう油だけではなく、加工食品や売られているお惣菜、お菓子にも塩分は多く含まれます。
 腎機能を保つために、尿量は800cc程度(最低400cc)は欲しいので、飲水(食事以外のお茶、お水や飲み物)は800cc〜1500cc程度となります。汗を掻いたり(熱がある時なども)、下痢の時はさらに500cc〜1000ccほど増やします。腎不全の時も脱水は良くないので、尿量を1500〜2000ccに維持したいものです。浮腫みや体重増加が無ければ、
1500cc〜2000ccは飲水して下さい。

 例えば、55kgが調子の良い体重だとすれば、朝の体重が54〜56kgなら、1日の飲水量はペットボトル(500cc)2〜3本(1000〜1500cc)とします。腎臓の悪い人はペットボトル3〜4本とします。下痢や、発熱時、発汗時は1〜2本増やします。朝の体重が57kgに増えていれば、浮腫みの出る前なので、利尿剤を増やしたり、飲水量をペットボトル1本半程度に減らします。朝の体重が53kgなら、利尿剤は止め、飲水をペットボトル4〜5本とします。
基準となる体重は毎月見直し、「肥える・痩せる」を考慮し変更します。
但し腎不全で透析をしている人は、尿が少ないので、飲水量は1日尿量〜300ccとします。

また、感冒や過労も悪化の原因になることがあります。注意しましょう。
体重 Kg未満〜 kgKg以上
飲水量ペットボトル 3〜4本以上2〜3本1本半
利尿剤中止指示とおり屯用或は増量


 

「糖尿病を放っておくとどうなるか」

「糖尿病を放っておくとどうなるか」
〜健康寿命を伸ばすために〜
副院長 高橋栄男

 日本人の平均寿命は80歳近くに達しています。しかし、健康寿命は約5〜6年間短く、その間は入院したり、寝たきりになることが多いのです。しかし、糖尿病患者の平均寿命は70歳、健康寿命は65歳より短いと言われています。日本人の3人に1人は心筋梗塞、脳卒中、つまり、動脈硬化で亡くなります。糖尿病患者さんは糖尿病で亡くなるのでなく、動脈硬化を10年早く強く起こし、心筋梗塞、脳卒中のため早く寝たきりになり、亡くなるのです。人は血管から老いるのです。

<動脈硬化とはどのような病気なのでしょうか?>
 
 
動脈は体中に血液を運ぶパイプです。血液は全身に、栄養、酸素を運び、そして、老廃物、二酸化炭素を持ち帰ります。年を取ると動脈硬化が起り、そのパイプが詰まるのです。  
 
<ではどのような人が脳卒中、心筋梗塞になりやすいのでしょうか?>

1、既に、脳卒中や狭心症、心筋梗塞に罹ったことのある人は、既に全身の血管が
  痛んでいるので健常人の約5〜15倍なりやすい。

 2、加齢、高血圧、糖尿病(糖尿病前段階を含む)、喫煙、家族歴、
  高コレステロール 血症
などが強い動脈硬化の原因になります。
   一つで2倍、二つで4倍、三つで8倍、四つで16倍なりやすくなります。
  しかも、糖尿病 は一つで三つ分の影響があると報告されています。心筋梗塞で
  入院した人の3人に2人は糖尿病か前段階であったと報告されています。
  さらに、糖尿病があると神経障害、眼底出血、蛋白尿、尿毒症を引き起こします。

 
<糖尿病とはどのような病気でしょうか?>

  人間の体が生きていくためのエネルギーとして、ブドウ糖が大変重要です。食べ物の中の炭水化物(ご飯、パン)が消化、吸収されたブドウ糖は、血管の中を血液に溶けて(血糖上昇)全身に運ばれます。その時、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが、細胞の入り口を開けてブドウ糖を細胞の中に入れます。細胞はエネルギー源をもらえますし、その結果、血液に溶けていたブドウ糖が減ります(血糖低下)。インスリンが少ないか効きが悪くなる(肥満、ストレス、運動不足)と、血糖が上昇します。これが糖尿病なのです。しかし、自覚症状は弱くあてになりません。怖いのはブドウ糖が血液にたくさんあると、酸化ストレスを起こしたり、蛋白変性を起こすことで、血管が非常に傷むのです。糖尿病では、目に見える太い動脈だけではなく、目に見えないくらい細い血管(毛細血管)まで傷めるのです。動脈が傷むと怖い脳卒中(半身麻痺になる)、心筋梗塞になりやすくなります。毛細血管が傷むと、神経障害、眼底出血、腎障害を引き起こします。ただし、血管が傷むまで5年以上かかります。病気として困るまで10〜20年以上かかります。しかし、いったん傷むと元には戻らず、深刻なこととなります。初めの10年は結果オーライなのです。

 神経障害が起ると手足がしびれたり、ジンジン痛んだり、立ちくらみや下痢、便秘が起ります。網膜症(眼底出血)は8年後位から出ます。しかし、少々の出血では自覚症状はなく、失明の間際まで症状が出ないことが多いのです。糖尿病のために,毎年3500人の日本人が新しく失明します。腎臓は血液の中のゴミを尿として捨てます。腎臓が傷むと、蛋白尿が出てネフローゼとなり、さらに進行すると尿毒症になります。糖尿病のために、毎年1万4000人の日本人が新しく血液透析をしないと生きていけなくなっています。
   
 また、糖尿病患者さんは高血圧、高脂血症の合併が多く、糖尿病患者さんの約半数が高血圧を合併します。イギリスの研究では、糖尿病患者さんの血圧を10mmHg下げるだけで、死亡率が32%減り、脳卒中は44%減りました。眼底出血も37%減りました。アメリカの研究では、心筋梗塞をしたことのある人で調べると、糖尿病のない人では6年間で約30%の人が心筋梗塞を再発しましたが、コレステロールを下げる薬を飲むと、約20%に減りました(1/3減少)。糖尿病の人では約50%の人が心筋梗塞を再発したのに、コレステロールを下げる薬を飲むと約23%に減りました(半分以下)。糖尿病の人では、動脈硬化になりやすく、高血圧、高脂血症の影響と強く受けます。しかし、その分それらの治療は予想以上に脳卒中や心筋梗塞の発症を予防することが次々と報告されています。つまり、糖尿病は糖がおしっこに出る(糖尿)というよりは、慢性に動脈からの毛細血管まで全身の血管をボロボロにする怖い病気なのです。

  ではどのようにすれば良いのでしょうか。先に述べたように、血管を傷める原因である血糖、血圧、高脂血症を十分に治療し禁煙することです。血糖が高いと血圧、コレステロール、タバコの影響を強く早く受けるのです。自覚症状に頼ってはいけません。検査を受け、血圧を測ることです。コレステロールは少しでも高ければ、すぐにコレステロールを下げるスタチンという薬を飲みます。悪玉コレステロール(LDL)を120以下にしましょう。血圧の薬も飲み、130/80以下にしましょう。血圧の薬をたくさん飲んで十分に下げた人が健康寿命が長くなります。失敗しても良いですから禁煙にトライしましょう。そして、血糖を下げましょう。血糖が200を超えなくなると疲れにくくなるのが分かります。

 糖尿病に治療は、まず検査を受けることから始まります。自覚症状がないことや、太っていないこと、身内に糖尿病の人がいないことなどは当てになりません。検査を受け、HbA1c(ヘモグロビンは赤血球の中で、酸素を運ぶ蛋白質。貧血のときに低いと言われる。血糖が高いとブドウ糖と結合する量が増える。そのパーセント。赤血球の中にあるので、約1ヶ月の糖尿病の成績となる。学校の通知表の感覚)が7.0未満、出来れば6.5以下にコントロールする。5.8%未満と正常なら、糖尿病の影響は出ません。食事療法、運動療法を行い、検査をして必要があれば、お薬を飲み、必要があればインスリンを打つ。これが大切なことです。

  糖尿病は今でもどんどん増えています。糖尿病患者さんは約740万人、糖尿病前段階の人はさらに880万人います。ではどのように生活習慣が変わったのでしょうか。動物性脂肪(お肉)をたくさん食べるようになった。砂糖をたくさん使うようになった。歩かなくなり、運動量が減った。お酒を飲む量が増えたなどです。肥満の人が増えた。よって、生活習慣を改善すると良いのです。腹8分目に食べる。おかずはお肉より、魚、豆類を増やす。野菜をたくさん食べる。お砂糖は控える。毎日30分以上散歩する。お酒は減らす。年を取ったら、若い時より食べる量を減らす。タバコは吸わないなどです。30歳代から肥満、運動不足がひどくなり、40代、50代で糖尿病、高血圧、高脂血症が急激に増えます。少しでも血糖が高いといわれた人は、定期的に検査を受け、早急に生活習慣の改善に努めることが大切です。

  血管を大切にし、細くならない、細くても詰まらない血管にしたいものです。70歳、75歳まで脳卒中や心筋梗塞のために、寝たきりにならないようにしたいものです。
 
 糖尿病だけではなく、高血圧、高脂血症、禁煙に関してご相談下さい。私は医誠会病院にて糖尿病外来を行っていましたが、半年以上糖尿病外来に通院していただいた患者さんの平均HbA1cは6.7%と良好でした(下記の表)。


  1月から糖尿病教室を始めますので、糖尿病の患者さんはもちろん、生活習慣病が気になる方も是非ご参加下さい。  
 
  人数 初診時 最良値 現在値
全患者 394   8.8 6.1 6.7
H16年度初診患者 136   8.6 6.3 6.6
薬物療法


 
投薬なし 47 11.9% 6.7 5.5 5.8
内服薬 255 64.7% 8.7 6.0 6.6
インスリン(3〜4回) 48 12.2% 10.7 6.3 7.3
インスリン(1〜2回) 44 11.2% 9.5 6.5 7.2
入院
 
あり 79 20.1% 10.0 5.9 6.7
なし 315 79.9% 8.5 6.1 6.7
 


 

「血管が詰まらないように」〜血管の手入れをしましょう〜

「血管が詰まらないように」
〜血管の手入れをしましょう〜
副院長 高橋栄男

血管の腫れ、炎症とは?

日本人の平均寿命は80歳近くに達しています。しかし、健康寿命は約5〜6年間短く、その間は入院したり、寝たきり、介護を受けることが多いのです。心筋梗塞、脳卒中などが、寝たきりの原因となります。動脈硬化を防ぐことが、寝たきりの予防の鍵となります。

人間は細胞から成り立っています。細胞は、酸素とブドウ糖などの栄養が必要であり、酸素や栄養を運ぶのが血液、血流なのです。血液の流れるパイプが動脈です。心臓は、1日に約10万回拍動し、血液を押し出しています。1日で、約7000リットルの血液を送り出します。動脈の傷む原因の第1位は年を取ることです。さすがに丈夫な動脈ですが、50年を過ぎると傷みが目立ってきます。しかし、早く、血管が傷む人もいます。大切に手入れすれば、70年、80年、住める家があるとしましょう。手入れをしなくても、初めの50年は、さほど、困らない、しかし、手入れをしないでいると、50年を過ぎると雨漏りや、電気、水道、下水に不都合がおこります。そこで、手入れすれば、まだしも、まだ、放っておくと、家が傾いてしまいます。そうなってから、後悔しても遅いわけです。体は引っ越すわけにはいかないのです。

ではどのような人が脳卒中、心筋梗塞、(動脈硬化)になりやすいのでしょうか?
1.既に、脳卒中や狭心症、心筋梗塞に罹ったことのある人はすでに全身の血管が痛んでいるので、健常人の、約5から15倍なりやすい。
2.加齢高血圧、糖尿病(糖尿病前段階を含む)、喫煙、家族歴、高コレステロール血症などが強い動脈硬化の原因になります。
  一つで2倍、二つで4倍、三つで8倍、四つで16倍、なりやすくなります。
糖尿病は一つで三つ分の影響があるとされています(動脈硬化、高血圧ガイドライン)。

他に、たんぱく尿、心肥大、心不全なども、すでに、血管が傷んでいる証拠となります。

肥満は、これらの原因となります。

年を取るのは避けられませんが、血圧、脂質、糖尿病、喫煙はコントロールできます。既に、動脈硬化が進んだ人も(脳卒中、狭心症、心筋梗塞、たんぱく尿、心肥大、心不全)、コントロールを行えば、進行を抑えられるし、血管も詰らなくなります。コントロールしないと、どんどん合併症が起こってきます。

動脈硬化が起こり、血管が詰まります。私も、コレステロールが血管に溜まり、徐々に血管が細くなり、血管が詰まるのかと考えていました。しかし、最近の研究で、考え方が少し違ってきてます。血管の内側には内皮と言う薄い膜が覆っています。このうすい膜が非常に大切です、この内皮は血管を拡げる機能、血液が固まらないように機能しています。血液は、血管の外ではすぐに固まるのに、血管の中では内皮のおかげで、固まらないので、血管は詰らないのです。この、内皮が、破れると、血液は一瞬にして固まり、血管を塞いでしまいます。血管を完全に塞いでしまうと、脳卒中、心筋梗塞となるのです。たいして、細くなっていない血管でも詰まったりします。

血管の壁にコレステロールが溜まるだけでは、血管は詰まりません。しかし、コレステロールの溜まりが腫れる(炎症)と、内皮の機能が弱まり、血管を広げる力が弱くなります。さらに腫れて、破れてしまうと、コレステロールなどが、血液と接触し、血液が固まり、血管が詰まってしまいます。血管にコレステロールが溜まり、次に、血管が腫れ、血栓を作り、血管が詰まる、と考えられるようになってきました。

血管が腫れないようにすれば、血管はなかなか詰まりません。血管が腫れないようにするために、血圧、脂質(コレステロール、中性脂肪)、糖尿病(糖尿病前段階から)、タバコを十分にコントロールすることです。これらを十分コントロールすれば、血管にコレステロールも溜まりませんし、溜まっても、腫れなければ、破れませんし、血管は詰まりません。コントロールを続けていますと、徐々にコレステロールの溜まりが小さくなり、皮が硬くなり、破れなくなります。

コレステロールは食事療法(卵の黄身、脂ものを控える)で少し下がりますが、体質が大きく、必要なら、早めに、薬のスタチンを飲むべきです。スタチンは約40%、コレステロールを下げるだけでなく、血管の炎症を押させる作用があり、注目されています。特に、すでに、脳卒中や心筋梗塞を起こした人や、糖尿病患者での、動脈硬化予防効果、脳卒中、心筋梗塞予防効果は非常に強いです。

中性脂肪は痩せると下がりやすいです。脂もの、飲酒、甘いものを控えましょう。炭水化物を取りすぎても、溜まるのは脂肪です。その脂肪は中性脂肪なのです。薬のフィブラートは中性脂肪を良く下げます。

血圧は、塩分を控えましょう。アルコールを控え、痩せることも効果があります。そして、降圧薬を徐々に増やしましょう。必要なら、3種類、4種類、飲みます。増やせば、徐々に下がります。同じ種類の薬をたくさん飲むより、違う薬を組み合わせる方が、効果も強く、副作用も少なくなります。レニンアンジオテンシン阻害薬は血管保護作用もあります。

タバコは、癌を増やすだけでなく、動脈硬化を強く勧めます。禁煙しましょう。失敗してもかまいません、何度でも禁煙しましょう。

血糖が少しでも高い人は、動脈硬化が進むことがわかってきました。糖尿病患者と同じく、食事療法、運動療法に励みましょう。糖尿病患者は高血圧、コレステロール、タバコに非常に弱いので、糖尿だけでなく、良くなる所からどんどん良くしましょう。そして、必要なら、薬を飲み、インスリンを打ち、血糖を下げましょう。しかし、食事療法を疎かにして、薬やインスリンを増やすと、肥満となり、さらに、薬剤が増えます。徐々にで、良いので、血糖を下げ、体重を下げましょう。3〜5kg痩せるだけ、効果は抜群です。

肥満は、高血圧、中性脂肪、糖尿病との関連が強いです。肥満があると、いずれ、高血圧、高中性脂肪、糖尿病になる可能性が高いし、肥満を減量することがこれらの疾患を良くします。若い人で肥満の人が増えています。30代は肥満しても、病気も出ないでしょうが、40代、50代になると、体が抑えきれなくなり、血圧、脂肪、血糖が上昇してくる。それから、10年もすると血管が詰まってくるわけです。若い内に太らないことは最大の予防となります。(メタボリック症候群)

すでに、血管が傷んで、脳梗塞や、狭心症、心筋梗塞がある方は、上記の手入れとともに、抗血小板剤を飲みます。血小板の凝集が、血液が固まる第一歩だから、これを抑制します。簡単にいえば、血を固まりにくくし、サラサラにすると言えば良いでしょうか。そして、脱水にならないように、水分をよく取り、血流を保つ。

血管の手入れに特別な方法はありません。血圧、脂質、血糖、タバコをしっかり管理すること、肥満を抑制することが、最大の予防法なのです。これらの治療は血管を詰まらないようにする大切な手入れであるし、王道なのです。また、これらをしっかり手入れすると、脳卒中や心筋梗塞の発症を1/3から半分が抑制できることが報告されています。